…ツイニ…コノ日ガ…来テシマッタカ…
本当に1000㎞も走れるの…すごく不安になってきた…
スタート地点に立ったことが夢のようであります!
ここまできたら走るしかないじゃろ。さぁー!!いっちょ、ぶわぁ~~~っといくかぁぁぁぁぁ!!!
その1 「わかっちゃいるけどやめられない」
2019.7.12 本番前日 ルートイン石巻中央
出発地点の宮城女川駅はわりと小さい町なのでホテルが取りづらいため、近隣で大きな町である石巻にホテルをとって、当日は18㎞くらい自走で行くことにしました。
家族と離れてプライベートのお泊りなんて本当に久しぶりだったので、いろいろテンションがあがっちゃいました。
具体的にはホテルのロビーにあった有川浩の『旅猫レポート』を読んで号泣。ストロングゼロを飲みながら同じく有川浩の『レインツリーの国』を読んで大号泣。まさか35年前に大好きだった小説をモチーフにした小説にここで出会えるとは思いませんでした。
ちょっと涙がおさまってきたので、お風呂にでも入ろうとフロントの前を通りかかったら、チェックインしようとしている一人のランドヌーズのお姿が…。
なんと、『日本ブルベの母』『レジェンド』と称される井手マヤさんではないですか!
今私たちが楽しくブルベで遊んでいられるのも、井手さんたち先人の方々がご尽力とご努力のうえに、日本にブルベを持ち込んでいただけたおかげです。
ご挨拶させていただいたところ、
「明日は何時に出発すると間に合うのかしら?」
とおっしゃられるので、スタート地点まで同行させてもらうことに!
1000㎞ブルベの前日におきたとっても幸運なできごとに、思わず補給食のはずの『おやつカルパス』を食べ食べ、ビールをもう一本飲むと(三本目)石巻の夜は更けていくのでした…
2019.7.13 6:00 本番当日 ルートイン石巻中央レストラン
バイキング方式の食事を終えると、エントランスで輪行解除している男性の方もいらっしゃったので、その方と私とマヤさんで女川駅へ向かうことにします。
おおよそ18㎞程度の楽しい楽しいサイクリングです。
道中はずっとマヤさんによる東北愛あふれる『推しの絶景スポット』を教えていただきました。曰く、
「久慈から八戸への海岸沿いが素晴らしい。昼はもちろん夜のイカ釣り漁船の漁火が最高に美しい」
「天気のいいときの南三陸町や陸前高田、釜石、気仙沼のリアス式海岸は息をのむ美しさ」
「震災復興のおかげで毎年違う風景になっているから毎年来る価値がある」
等々とあきらかに東北人である私より東北愛にあふれていました。
そうなのだ。やっぱりどんなベテランでも普段見ない絶景を楽しみにブルベを走るのだ。
もちろんブルベを走る理由なんて人それぞれだし、その人にとっても複数の理由があるのだろうが、『景色を楽しむ』というのが重要なファクターになっているのは間違いないでしょう。
何十時間もかけて見たことのない景色を見に行く。なんと贅沢で酔狂なことでしょう。さてさて今回は制限時間75時間のあいだにどんな景色と出会えるのかしら?
ゆっくり走っておよそ1時間。女川駅に到着しました。
昨日まではお互い知らない者同士のサイクリングはごくごく自然に打ち解けて、今回のブルベの中でもっとも安らかなひとときでした。
いままで400㎞しか走ったことのない私が挑もうとしている今回のブルベは1000㎞です。
はじめて参加する1000㎞ブルベのまえにマヤさんとサイクリングなんて、とてもすごいご褒美をいただいてしまいましたし、幸先のいいスタートがきれました。
その2 「見ろよ青い空、白い雲。そのうちなんとかなるだろう!」
2019.7.13 8:30 女川駅前
前日までの天気予報はあまりかんばしくなかったのですが、素晴らしい快晴!楽しいブルベになりそうです。
全国からHENTAIランドヌールが大集合しているのにこの快晴とは、だれが黒魔術をしているのか勘繰りたくなります。
石巻方面からの列車が到着すると、改札から輪行袋を手にした人たちがどっと溢れ出て、手際よく自転車を組み上げていきます。
みんなニコニコと談笑しつつ準備をすすめているのですが、不安そうな顔立ちの人がほとんどいないと、知り合いの方がつぶやいていました。たしかにこれから1000㎞もの距離を走るはずなのに…。
私もTwitterでよくお見掛けする方や、東北ブルベでよくお会いする方と他愛もない雑談をしつつ緊張をほぐしていたのですが、あるお方が到着したことに気がつきました。
自転車に乗ったその男がゆらりと姿をあらわすと、一瞬場内がシーンと静まり返りました。ランドヌール宮城スタッフのKさんです。
静まった場内がすぐザワザワとしはじめて、Kさんのまわりにひとだかりができた理由は、彼の乗っている自転車がおよそブルベむきではないであろう『オーディナリー』だからです。
ロードバイクだと「簡単すぎるから」という理由でオーディナリーでブルベをするらしいのですが、二つしかないギアで淡々と登り、下りでは後ろのステップに立って(固定ギアのため下りだとペダルもすごい勢いで回るため)轟音とともにダウンヒルする姿は、はじめて目にするものをアングリとさせます。
もちろん制限時間をフルに使ってのブルベ運行ですが、Kさんはほぼ完走するため、時間ギリギリになり完走が危ぶまれ、不安でいっぱいになったときにKさんの姿をお見掛けすると「ああ、まだ大丈夫だ。間に合うぞ」とすごく安心します。
SNSとかされていないので、噂話が先行して『東北の生ける伝説』とか『妖精さん』『ランドヌール宮城のアイドル』など二つ名だけが広まるという状態だったので、宮城に遠征してきて本人とオーディナリーの実物を見るのが初めての方も多かったのでしょう、みなさん興味深く写真をとったり、お話を聞いていたりしています。
私の見たところ、異形の自転車はオーディナリー1台ミニベロ1台シティサイクル2台かな?
シティサイクルのかたわれはバンドでディスクブレーキがくくりつけてある魔改造車です。
最終的にカゴステーとかライトとか壊れたみたいですw
乗っている方は宮城でも割と有名な方なので、みんなの反応も「ああ、そうきたか…」くらいなのがシュールです。
ただでさえ厳しい1000㎞に自ら難易度をあげにくる人も「おお、やるね」ですませる人たちも、HENTAIさんだらけの大ブルベ大会が幕を上げようとしています。
その3 「明けて万国 世直し祭り ドンとバラ色 派手派手花火」
2019.7.13 10:00 スタート時間 女川駅前
始まった~~~ッッ!!!
…誰?この美女?
剛脚と噂される東北のランドヌーズさんなのじゃが、残念ながら都合が変わってPC1でDNFする予定らしい。せっかくなのでそこまで引っ張ってもらおうかと
(PC:Point de Controleチェックポイントの意味 DNF:Did Not Finish リタイヤの意味)
…ナンカ…カッコ悪イコト…言ッテイル…
うら若き女性に引いてもらうの!ヘタレね~
なんとでもいうがよい!序盤の体力温存と貯金をつくるためならなんでもするぞ!しかも非常に楽しいではないか!(本音)
正直うらやましいであります!
目指すは本州のはじっこ、龍飛崎!みんなワシについてこーい!!
…ハラホロヒレハレ…
続く