どこまでも続いていそうな平坦な道を2台のロードバイクが疾走していた。なかなかに引き締まった体躯の持ち主である彼らはおそらくザイバツのカチグミリーマンであろう。
秒で1000万円を稼ぐこともある彼らは、日頃溜まった疲労とストレスを軽減するため休日ともなるとスポーツを嗜む傾向にある。
バイオスモトリハンティングやオイランオビグルグルなどが人気のスポーツだが、ロードバイクによるサイクリングも実際人気があった。
「ササキ=サン!今度は私が牽きます!ローテーション!」
「ありがとうございます。スズキ=サン。ユウジョウ!」
「ユウジョウ!」
交互に先頭を替わりつつ、2台のロードバイクはどんどんとスピードをあげていく。
しかし、注意深い者がみればササキ=サンと呼ばれたものがより多く前を牽いていることに気がついただろう。
この奥ゆかしさは二人のサイクリングが実は接待重点ライドであることを示している。ビジネスの間柄には完全に対等な立場などなく、接待の気持ちを忘れる者は実際シツレイなのだ。
このササキ=サンという男は接待ライドがスゴイ得意であった。
率先して前を牽き、地面にギャップがあったら指を差し、減速するときや左右に曲がるときには余裕をもって手信号をだした。ワザマエ!
30分後、スズキ=サンのスピードがちょっと落ちたのをササキ=サンは見逃さなかった。ササキ=サンの目が怪しく光る!
おお!ゴウランガ!!
ササキ=サンは背中のポケットからヨウカンを出した。しかもそのヨウカンに輝く誇らしげなタイガーマーク!
「ドーゾ、スズキ=サン」
「ありがとう、ササキ=サン。なんだか急に足に力が入らなくなって……おや、このヨウカンは……」
「お気づきになられましたか。トゥーラ屋のヨウカンです」
「これが噂の……(ムシャムシャ)」
「実際いかがですか?」
「アイエエエエエ!旨い!旨さ重点!」
ササキ=サンからのアンブッシュをうけたスズキ=サンは瞬く間にヨウカン3本を食べ尽くすと、奥ゆかしく指をペロペロなめ回した。
スズキ=サンの血中アンコ濃度が急上昇する!
「ササキ=サン!今度は私が牽く!だから次の休憩地点に着いたら、もう一本ヨウカンをくれないか???」
「もちろんですともスズキ=サン。ユウジョウ!」
「ユウジョウ!」
そうして先頭を替わったスズキ=サンはカウ・ホースのように目を血ばらせてペダルを回しはじめたのだった。
そんなスズキ=サンの様子を見てササキ=サンは次の昇格考査に手応えを感じるのであった。これしきの接待は彼にとってチャメシインシデントである。
次回予告
サイクリングを続ける2人の前に巨大タイヤを履く巨大なオーディナリーに乗った巨大なニンジャが立ちふさがった。
「ドーモ、アンコイーターです。しめやかにヨウカンを出して死ぬか、出さないで死ぬか選べ」
「「アイエエエエエ!!!」」
2人はしめやかに失禁!
そこにいつものようにニンジャスレイヤー登場!
「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」
「オタッシャ重点でー!」
ニンジャは爆発四散!
巻き添えでカチグミリーマンも絶命!ショッギョムッジョ!
次回 『ニンジャが来てやっぱり殺す』
オタッシャデー!
『ニンジャスレイヤー』と『とらやの羊羹』を買って待て。備えよう。